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東京でも、かつての「武蔵野」の面影を残すところは、ほとんどなくなってしまった。
外国にも誇れるような田園風景を取り戻すには、どうしても都市の高度利用が必要である。 まず、土地の集約化について考えてみよう。
零細化した土地や建物を共同化するには、いくつかの解決困難な問題がある。 規模の経済が大きいと考えられる都市内については、なるべく土地所有を零細化させないことが望ましい。
いったん所有関係が零細化してしまうと、それを集約化するために、さまざまな社会的費用が発生するからである。 このような社会的費用を発生させないために、土地の切売りを促進させないことが望ましい。

また、規模の経済が大きいと考えられる土地利用を、非効率な単位に分割して利用することを避けなくてはならない。 しかし現実には、東京でも、とくに古くから開発された街では、ペンシルビルと呼ばれる規模の小さなピルが数多く存在し、これからも建設されようとしている。
このようなビルは、景観が悪いだけでなく、効率上もきわめて劣っていることが一目瞭然であろう。 20O1年9月に起きた、4O人以上が犠牲者となった新宿雑居ピルの火災でも明らかになったように、防災上も大きな問題がある。
どのような小さなビルにも、エレベーターや廊下などの共用部分を設置しなければならない。 安全性のために、防火設備や非常階段も必要である。
もし、いくつかのビルを共同化することができるならば、このような設備のかなりの部分は節約できる。 ペンシルピルは、土地利用が零細化してしまったために起こった現象である。
以下ではまず、なぜ土地所有が零細化してしまったのかを考えよう。 その後、いったん零細化した土地所有を共同化するときの問題点について取り上げる。
ここでは、なぜ都市における土地所有が零細化してしまったのかを考えてみよう。 宅地が零細化してしまった基本的な原因は、地価の高騰と税制にあると考えられる。
地価が上昇すると、需要の法則に従って、各人の土地需要量は減少する。 これ自体は市場制度のもとでは問題ではない。
土地の稀少性が高まり地価が上昇すると、それがシグナルとなって、人々に土地の利用を節約するように要請する。 これによって土地利用が小規模化するのであれば、効率性の観点からは問題とはならない。
しかし、前述のように、都市内の土地利用には、著しい規模の経済が働いていると考えられる。 そのときには、土地所有を集約化し大規模化する力が働くはずである。
しかし、そのような市場メカニズムが税制等によって打ち消されている可能性がある。 したがって、土地の規模を零細化する税制がなくなれば、土地所有は大規模化し本来の効率性を回復するだろう。

それでは、税制のどのような措置が土地所有の小規模化を促進するのだろうか。 代表的な土地税制について調べてみよう。
まず固定資産税には、分配の公平性という観点から、小規模な宅地所有者に対して、その税金を軽減するという措置が導入されている。 これは小規模宅地の軽課措置と呼ばれているものである。
過去、何度かの地価の急激な上昇のために、宅地保有者の負担が過重になってしまうという理由から、住宅用地に対する課税を切り下げる措置が講じられてきた。 1973年に地価が高騰し、それにともなって固定資産評価額も上昇した結果、それに税率をかけて得られる固定資産税額も上昇した。
しかし、それでは一般の宅地保有者が、固定資産税を払いきれなくなってしまうという政治的理由から、土地の評価額を二分の一とする措置が取られた。 つまり、本来の税金の半額になったのである。
さらにその措置が拡大され、現在では3分の一の軽課措置となっている。 すなわち、宅地の固定資産税額は、住宅地以外ならば払わなければならなかった金額の3分の一に減額されている。
さらに、日常生活に最低限必要とされる一世帯当たりの基本的な土地の広さを20odとして、それ以下の規模の宅地に対して評価額を6分の一に減額するという措置が導入された。 20odが妥当かどうかという問題が残っているが、このような措置のために、土地は零細化して保有したほうが有利になることはいうまでもない。
これによって、宅地は大規模に売るよりも小規模にして売却したほうが売却総額は上昇する。 この結果、郊外の分譲地の平均的な面積は二00.町以下に抑えられている。

しかし、固定資産税のこの効果については、それほど大きいとは思えない。 むしろ、より大きい効果を及ぼしているのは、譲渡所得税や相続税であろう。
譲渡所得税は、土地を譲渡した際に課される税金である。 土地譲渡所得税では、土地の保有期聞が短期と長期とで異なる税率が適用されており、控除額も異なっている。
短期的な保有に関しては、一般に高い税率が適用されるとともに、控除額も低い金額しか認められていない。 これに対して、長期の譲渡所得に対しては控除額も大きく、低い税率が適用されている。
現在、長期の譲渡所得については、6OOO万円以下の部分については20%(住民税6%)、6OOO万円を超える部分については25%(住民税7・5%)の税率が適用されている。 これは一般の所得とは分離して課税される分離課税制度であり、6OOO万円以下の部分と6000万円を超える部分については異なる税率が適用される累進構造になっている。
この累進構造を強めているのが、控除額である。 宅地を譲渡した場合に得られる譲渡所得から一定の金額が控除されて、その超過額について税金が課せられる。
現在では、最高5OOO万円までこの控除が認められている。 したがって、譲渡所得が最大5OOO万円までは、譲渡所得は支払わなくてすむ。

この累進構造は、土地売却行動にどのような影響をもたらすであろうか。 すぐわかるように、これは土地の切売りを促進する。
土地を譲渡する際に、土地を小規模に分割して売却することによって、譲渡所得を5000万円以下にしようという強い誘引が働く。 その結果、規模の大きな土地も、零細な土地に切売りきれて供給されていく。
そうすれば、譲渡所得税の納税額を大きく節約することができるからである。 農地が宅地に転用されるとき、相続税の支払いのために土地を切売りするという事実がしばしば観察される。
土地の譲渡所得を一定額以下にすれば、税金を節約できるのが譲渡所得税の累進構造である。 相続税は、基本的に法定相続分を基本として課税額が決定されるために、土地の所有規模を零細化させるかどうかについては明らかではない。
しかし、流動性制約や借入制約が存在すると、土地所有の規模を小さくすると考えられる。 また、譲渡税との相乗効果で土地所有を小規模化する可能性がある。
ここで簡単に、日本の相続税制について説明しておこう。 日本の相続税制は、実際に相続を受ける人数や金額によって税額が決まるのではなくて、法定相続人の数で税額が決定される。
いま、配偶者と子ども二人からなる相続人の場合を考えてみよう。 現在、基礎控除が5000万円認められている。
さらに、相続人一人当たりについて1000万円の控除額が認められる。 したがって、配偶者と子どもが二人の場合には、5OOO万円+3OOO万円の控除が認められることになる。


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